おいらの人生これから、こらから・・持病に負けず、老いにも負けず・・リタイヤ爺の独り言

「はんがーカフェテリア」(5)

「それは?」

「いつもバッグに入れて歩いてるの」

「・・・」

「あ、これはここの書棚には置かないの」

「・・・」

「僕も持っているんですよ」

「・・・」

「好きなんですこのうた」

「・・・」

すると、彼女は挟んだ手のページを開き、読み出した。
まるで翔太に囁くように。

「青いお空のそこふかく、」

「海の小石のそのように」

「夜がくるまでしずんでる、」

「昼のお星はめにみえぬ。」

「見えぬけれどもあるんだよ、」

「見えぬものでもあるんだよ。」

翔太もこの詩が好きだった。
心地よい囁きの中。
彼女の横顔は、本の表紙の女の子に似ている。

「ちってすがれたたんぽぽの、」

「かわらのすきに、だァまって、」

「春のくるまでかくれてる、」

「つよいその根はめにみえぬ。」

「見えぬけれどもあるんだよ、」

「見えぬものでもあるんだよ。」

一人部屋で読むこの詩は、いつも悲しいのに
今、こうして聞くこの詩は違う。

「希望の歌・・・?」

翔太はつぶやいた

「私もそう感じたの」

「・・・」

「でも彼女、今の私の歳で亡くなったのね・・・」

そういって今度は、ぱたと本を閉じた。

「母の形見なの・・・」

通ずるものを感じたのか、翔太と目をあわさず
閉じた本の表紙に目を落としたまま、母親との
わかれ、そして手にした本のいきさつを翔太に
語り出した、まるで独り言のように。

3才の時に母を亡くし、母親の顔は写真でしか
知らない、今も父親と二人で暮らしている事。
高校生の頃、父親の本棚にあった、この本を見つけ、
「母さんの形見だよ」と父親からもらった事。

そして母が逝った歳が、みすゞと同じ26だった事。

「変ね・・」

会ってから30分経つか経たないかの翔太に
こんな話をと思ったのか、彼女の頬が紅らんだ。

「かおるって言います。木下薫です」

「斉藤翔太です。しょうって呼ばれてます」

まるで、学生同士のような自己紹介に、二人は照れた。


               つづく

※恋愛小説ではございませんのであしからず。




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中高年よ大志を抱け
クラーク02
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獏(ばく)は、中国から日本へ伝わった伝説の生物。人の悪夢を喰って生きると言われてます。どうぞ悪夢を見た時はここに来て「この夢をばくにあげます」とコメントして下さい、そうすれば貴方は、その悪夢を二度と見ずにすむ事でしょう。

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