おいらの人生これから、こらから・・持病に負けず、老いにも負けず・・リタイヤ爺の独り言

それは悪夢なんかじゃない


ばく様
初めましてルイと申します。
私の悪夢をばく様にあげます。

先日こんなメールが入った。
ブログアドレスは無くメールアドレスだけ。

単なるおふざけか、どんな悪夢かも解らない
一日二日そのままにしていたのだが、どうにも気にかかる
普段ならそんな事はしないのだが彼女に返信を打った。


ルイさん
このょうなメールは失礼とかも思いましたが、今まで30
通のメールをいろんな人から頂きましたが、すべて悪夢の
内容が書かれていました、私は神がかった人間でも、サイ
コな能力もなく、ましてや信仰も無いただのおっさんです
が宜しければ夢の内容をお知らせください。

なぜこんなお節介なメールを書く気になったのか
このプロフィールの下にメールボックスを設けたのは、確
かブログのテンプレートを変更した時だからまだ2週間経
っていない、それなのにもう30通ものメールが届いてい
るのだ。

こんな見も知らぬおっさんに事細かに自分の見た夢の内容
を書き綴る人達、最初は半信半疑で読んでいたが、一応「
貴方の悪夢頂きました、これで貴方にこの悪夢は二度と訪
れる事が無いでしょう」とメッセージは返してはいたのだが。

その内、メールを頂いた方達から、「その後あの悪夢をみ
る事が無くなりました」と感謝の言葉を頂く様になり、ち
ょいと後ろめたい気になった。

単なるブログ上でのお遊び気分で始めた事だが、悪夢を捨
てに来る人達の気持ちは意外とシリアスなもの、なんか遊
びごとでは済まされないような気がして、真剣に読むよう
になった。

そうするとメールに託された、悲哀、せつなさ、恨み、悲
しみが朧気ながら見えてきた気がした。

お遊びでもいい、見も知らぬおいらの所でそんな思いを捨
て去る事が出来るのなら、読ませて頂こう、こんなおいら
に想いを吐き出す事で少しでも心が安らぐなら聞かせて頂
こう、そんな嬉しい事はない。

そんな気持ちになり始めた矢先に頂いたこのメール、とて
も気になったのだ。


ばく様
唐突にあんなメール差し上げて申し訳御座いません。
実は・・・

ルイさんからの2度目のメールはこんな書き出しで綴られ
ていた、本文は公開出来ないがそれはあまりにも悲しい出
来事だった。

ルイさんは、自分より3つ年下の働き者の旦那さんと6才
の男の子、3才の女の子の4人家族で日々笑いの絶えない
生活を送っていた、ペーパードライバーだった彼女が軽自
動車を手に入れたのはそんな時、生活の足しにと始めたパー
トの仕事の通勤用に、それと子供達の習い事の送り迎えを
する為に、旦那さんが「お前が少しでも楽出来るように」
と自分の小遣いをローンの足しにして買ってくれた物だ。

2年前彼女が車を運転してから迎える始めての冬道、函館
とは言え2月の道路はまだ圧雪状態、この日残業で遅くな
る旦那さんとは、これから向かう隣町の実家で待ち合わせ
ることにして、子供達と車を走らせた、実家では入学を控
えた長男のため両親が用意したランドセルが待っている。

喜びに浮かれる長男は、いやいやチャイルドシートに固定
されている妹にちょっかいを出しキャッキャッと騒いでい
る、二車線の国道に入り軽くアクセルを踏み込んだその時
、車はすーっと横に流れた、彼女はあわててブレーキを踏
む、すると車は意に反して加速しあろう事か雪山となって
いる中央分離帯を飛び越え対向車線にドスンと落ちた。

「大変、子供達は」すぐさま振り返ると長男はしっかりと妹
に多いかぶさり、「大丈夫!」の彼女の声に二人は顔を歪
めてながらも涙をこらえていた、安心した彼女の体から一
気に力が抜けていく。



何時間経ったのか幾日経ったのか・・
彼女はママ、ママと呼ぶ娘の声で目を覚ました、旦那さん
に抱かれて叫ぶ娘、自分の体から伸びる数本のチューブ、
そして動かない体、理解を超えたこの状況に彼女は震えた
、そして息子の顔が見えない。


あの時、無事な二人の子供達を確認した直後、若い男女の
乗ったランクルが急に目の前に現れた軽自動車を避ける術
は無かった。

彼女が息子の死を知ったのはそれから2日後、事故から2
週間後のことだった、10日あまりも暗闇の中をさまよっ
ていた彼女をベッドに残したまま慌ただしく長男の葬儀が
行われ、2ヶ月後、戻った我が家には、やつれた夫と、笑
いを忘れた娘と、黒い縁取りの中で微笑む息子、その傍で
腕を通してくれる主を失ったランドセル、そして後部座席
で顔を歪めてながらも涙をこらえ口を一文字に噤んだ息子
の記憶が彼女を出迎えた。


それからの日々、家族キャンプを夢見ていた夫の悲しみと
初孫を奪ってしまった両親への申し訳なさを思うたび、夫
や両親の優しい言葉さえも悲しみの矢となって自分に突き
刺さる。

残された娘と夫の為にも気丈に生きようとすればするほど
ふつふつと湧きい出る悲しみの泉に身を沈めたくなる衝動
にかられる。



そして毎夜夢に現れる息子のあの時のゆがんだ顔は、いつ
しか得たいの知れない歪んだ魔物となって自分に覆いかぶ
さる、苦しくて命乞いする自分と、このまま闇の世界へ連
れて言ってと懇願する自分が交差した時、重い鎖に繋がれ
た罪人のまま目が覚める。



おいらへのメールと、あの日あの時の事故の記事を重ね合
わせて想う時、胸を潰されそうになった。

彼女はおいらの所へそんな悪夢を捨てに来たのだ。



ルイさん
メールありがとうございます、名も名乗らぬおいらですが
胸が痛くて慰めの言葉も出ません。

ただ一つ言えるとすれば、貴方が捨てようとしている夢は
悪夢なんかじゃない、息子が貴方に見せた歪んだあの顔は
、可愛い妹を必死に守ったぞと言う誉れの顔だ、涙をこら
え顔を歪めそれでも大丈夫だよとママに示した男の顔なのだ。

もう一度言わせて下さい

それは悪夢なんじゃない

ママ頑張れ、きっと息子は貴方が死にはしないかと

心配で心配で・・・、

いつか歪んだ息子の顔が笑顔に変わります

ですからこの夢は、貴方にお返しします



ばく








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Author:ばく
獏(ばく)は、中国から日本へ伝わった伝説の生物。人の悪夢を喰って生きると言われてます。どうぞ悪夢を見た時はここに来て「この夢をばくにあげます」とコメントして下さい、そうすれば貴方は、その悪夢を二度と見ずにすむ事でしょう。

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