おいらの人生これから、こらから・・持病に負けず、老いにも負けず・・リタイヤ爺の独り言

なっちゃんの帰郷 (5)

なっちゃん、野崎奈津子は杢グレーのタートルプルオーバ
ーにオフホワイトのパンツ姿で現れた、タイミング的には
肌寒い今夜に最適なファッションだ、それに5年前のあの
時よりも若々しく映るのは、一段と華奢になった体のせい
なのか。

「よぉ」

まるで示し合わせたかのように太一とおいらは同じ言葉を
発した。

「本当愛想がない二人ね」

ジーンズ姿のトモがおいら達をあきれたように見回した。

「相変わらずべっぴんだな・・」

ぶっきらぼうにロック氷にピックを突きたてながら言った
太一の言葉になっちゃんの頬がちょいと色づいた。

そんな二人を斜に見ながらふとセピアなあの頃が思い出さ
れた。

学生時代も終盤に差しかかった夏の終わりに皆で十勝川の
花火大会に行った、トモとなっちゃんそれに数人の女子と
おいらと太一、なぜか男は二人だけだけだったが、全員浴
衣姿で雑踏の中を駆け回った、やがて花火が終わり帰り客
で混み合う堤防を避け、普段は野球場の河川敷に降り暗い
芝生の上を皆両手に下駄をぶら下げながら歩いた。

寄り添うように歩いていた二人の後ろ姿が歩みを止めた時

「好き・・」

「困る・・」

怒るように好きと言ったのは、なっちゃん、消え入りそう
な声で困ると言ったのは太一、その後二人の間にどんな出
来事があったのかは知らない、そんなやりとりが他の女子
にも聞こえていたはずなのに、誰も話を持ち出さなかった
、そして40年以上経った今ではそんな事覚えているのは
きっとおいらだけじゃないかと思う。

太一はオーダーもとらずに割った氷をカクテルグラスに盛
り、バースプーンでクルクル回す、そのグラスを手元に置
きシェーカーに冷凍庫から取り出したアブソリュートを目
分量で注ぎメジャーカップに用意したホワイトキュラソー
とレモンジュースそれに氷を合わせ軽いタッチで20回ほ
どシェイク、いつ見ても感心する華麗な手さばき、シェー
カーのキャップをとりキンキンに冷やしたグラスに注ぐ、
淡い黄色の液体は最後の一滴でピタリと納まる。

そして太一はトモの向こう側に腰を下ろしたなっちゃんの
前に何も言わずにすーとそのカクテルを差し出した、淡い
黄色のそのカクテルの正体はバラライカ、甘酸っぱい口当
たりの影にアブソリュート(絶対的)と言う意味を持つ名
の40度のウオッカが潜んでいる。

奴が何を思って彼女に無言でそれを差し出したのか、おい
らの頭の中で20代のあの時の、オークラのバーカウンター
での出来事が鮮やかに甦えった。

「太一!それはやばいしょ」

昔に戻ったおいらが太一に言った。




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獏(ばく)は、中国から日本へ伝わった伝説の生物。人の悪夢を喰って生きると言われてます。どうぞ悪夢を見た時はここに来て「この夢をばくにあげます」とコメントして下さい、そうすれば貴方は、その悪夢を二度と見ずにすむ事でしょう。

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