おいらの人生これから、こらから・・持病に負けず、老いにも負けず・・リタイヤ爺の独り言

なっちゃんの帰郷 (6)

バラライカは不思議なカクテルである、ベースをブランデ
ーにするとサイドカー、ジンだとホワイト・レディ、
ラムベースならXYZ、そしてテキーラならマルガリータ
とそれぞれ意味深な名前で呼ばれている。

おいらの青春時代ではそんなカクテルの意味なんぞ無用の
知識だったのだが、今こうして歳を重ねて来るとなにか興
味深いものがある。

おいらが今の仕事を始めて何とか軌道に乗せた頃、仕事で
よく東京に足を運ぶようになった、まだ20代後半の時代
だ、東京へ行くとよく太一の所に泊めて貰った.

あの頃のオークラのオーキッドバーは午前11時からラン
チタイムがありクローズは深夜0時、だからおいらが此処
に来ても仕事に明け暮れる太一と飲みに出歩く事は殆ど無
かった。

午後2時にランチタイムが終わると夕方まで訪れる客もま
ばらになる、そんな時間帯を見計らってカウンターでバー
テンダーの太一を差し向かいに昼酒をよく飲んだ、もちろ
んあの頃のオークラはおいらみたいな若造には敷居が高く
それでも臆することなく通う事が出来たのは、太一が同郷
のアシスタントマネージャーに頼み込んで、オークラクラ
ブインターナショナル会員カードをおいらの為に取ってく
れたからだ。


バーテン02



そして何度かはなっちゃんとトモを連れて言った事がある
、その頃はドレスコードが純然と生きていた時代で、田舎
もん丸出しのおいらは一丁来のスーツ、それとは対照的に
洗練された彼女達、細身で八頭身でサラリと着こなしたワ
ンピー姿は、どこぞのお嬢様風でドアボーイも一礼するほ
どだった。

あの頃、おいらはあの花火大会の出来事から、なっちゃん
は太一を追いかけて東京に出てきたのではないかと勘ぐっ
ていた、だがトモも太一もそんな素振りを見せないし、都
会で暮らす三人の必死に生きる日常は、そんな色恋とは無
縁なのかなどと思ってもみたりしていた。

メインロビーからその奥にあるオーキッドバーにエスコー
トされて現れたおいら達を見て、慌ててロビースタッフの
同僚に頭を下げる太一を尻目に、両手に花の状態でおいら
はとまり木に腰を下ろした。

後ろのボックス席には客は無く、オーク調の色彩の中ソフ
ァーに落ちるカラフルなステンドグラスの灯りが、重厚な
雰囲気さえ感じるこの空間に愛らしさを添えている。

訪れるメンバーは殆どシニアクラスの中、まだけつの青い
若造三人は何故か堂々としていた、周りのスタッフも隔た
り無く接してくれる、これも太一が同郷のアシスタントマ
ネージャーに可愛がられていたからこそ出来た技、そんな
事を知ったのは彼が此処に帰ってきてからだったのだが。

なっちゃんが最初にオーダーしたのがバラライカ、太一が
小声で「止めておけ」と言ったが、彼女は何かを決心した
かのように太一の言葉を拒んだ、おいらその時バラライカ
とは何者か知らなかったので「おいらもそれを」となっち
ゃんに続いた。

おいらとトモは酔いも手伝い静かに盛り上がり、それから
の二人の無言のやりとりを知るよしも無く、ただ三杯目の
バラライカでなっちゃんの瞳から涙がこぼれ落ちた。



バーテン01






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